スペインのお隣、ユーラシア大陸の端っこにちょこんと乗っているポルトガルでは「ポルトガル語」が話されます。ポルトガル語はスペイン語と近く、お互い同士で、なんとなく話が通じるといううわさを聞きますが、本当のところはどうなのでしょうか。スペインとポルトガルの国境付近に住む日本人の方に、スペイン語とポルトガル語の違いについて教えてもらいました。
スペイン語もポルトガル語もラテン系
ラテン系の言語は日本人にとって、比較的習得しやすいと言われています。スペイン語もポルトガル語もラテン言語。たしかに英語と比べると発音も簡単で、聞き取りやすいと感じる方も多いでしょう。
そしてある程度会話ができるようになってくると、欲が出てきます。「スペイン語とポルトガル語、よく似ているけれどけれど…もしかして通じるのではないか!?」
スペイン語とポルトガル語の類似率は7割
スペイン語とポルトガル語の語彙を照らし合わせると、お互いのカバー率は70%前後といわれています。
つまり「スペイン語のネイティブとポルトガル語のネイティブがそれぞれの言語で話すと、7割程度の内容は分かりあえる」ということですね。
ちなみにスペインとポルトガルの国境に「ガディアナ河」が流れていますが、両岸に住むスペイン人もポルトガル人も特に相手の言語は学習せずに、それでも意思疎通に不自由しない、そんな風景を目にします。
通貨がユーロに統合されてからは「ポルトガルのほうがパンが安いから、国境を越えて買いに行こう」「こちらはまだ朝の9時だけれどスペイン側はもう10時でスーパーが開いているから行こう」など、意思疎通力をフル稼働させながら、地理条件・時差を生活に生かす機会も増えているようです。これは羨ましい!
スペイン語とポルトガル語は文法も似ている
文法についても、スペイン語とポルトガル語はとても似た構造です。若干の語順の違い、それも「間違えても通じる」程度の小さな違いです。
とはいえポルトガル語については、「ポルトガルで使われるポルトガル語」と「ブラジルで使われるポルトガル語」にかなりの違いがあるので要注意。語順や語彙、決まり文句など、ブラジルとポルトガルでは大きく異なることがあります。
また、方言のバリエーションが多いのもポルトガル語の特徴です。
「ブラジルに滞在してスペイン語だけでサバイバルしてみたら、サンパウロではよく通じたのに、マトグロッソでは通じなかった」という現象もあるわけです。
さらにポルトガル語はアフリカ大陸やマカオ、ゴアでも使われていて、もちろんそれぞれの土地に方言があります。ポルトガル語圏に滞在したいのであれば、「目的地で使われているポルトガル語がどういうタイプか」をしっかり調べておくのが吉ですね。
スペイン語とポルトガル語、相互に意思疎通は可能?
結論、「スペイン語話者とポルトガル語話者は意思疎通できるか?」…答えは「¡Sí!」「Sim!」(それぞれスペイン語・ポルトガル語の「はいっ!」)です。が、ここで注意点が2つ。
まず「似た単語が多いものの、その一方で、簡単な日常単語の中にすら『似ても似つかない単語』がある」ということ。
例えば一週間の各曜日の呼称も、両言語で完全に異なります。また、「発音が同じでもスペイン語とポルトガル語では違う意味になってしまう」という単語もたくさんあります。
分かりやすい例が「mas」(これには私も泣かされました…)。スペイン語で「más」といえば「もっと」、ポルトガル語では「しかし」という意味なので、会話中に大いに混乱します。恐るべし!
正式な会話では、きちんと勉強したほうが○
もう一つの注意点は「意思疎通ができるけれど、それは決してフォーマルなスタイルではない」ということ。日常会話程度であればカジュアルなゴリ押し会話でも大丈夫なのですが、改まった席では洗練された語学力が求められます。
これは、陽気でくつろいだイメージのラテン社会でも同じこと。「なんとか通じるから便利だ」という快適さに甘えて、もう一方の言語をきちんと学ぶ機会を逃してしまっては残念です。
「ほんの少しの学習で、もう一方の言語をかなりスムーズに習得できる」、これがスペイン語とポルトガル語の関係です。まずは「何が同じか」「何が違うのか」を把握するだけでも、その飛躍は実感できるでしょう。
学業の秋!もう1言語、はじめてみる?
「ここまででいい」と思ってしまったところで語学の学習は終わり、語学力の伸びもストップします。
学業の秋!語学の秋!スペイン語学習者の方も、ポルトガル語学習者の方も、ぜひ欲を出してお隣の言語に手を伸ばしてみてはいかがでしょうか…¡Buena suerte! Boa sorte!(グッドラック!)
執筆者:Sawita(スペイン在住の日本人)
Sawita氏の書いた著書を紹介しておきます。スペイン語とポルトガル語をもっと深く知りたい人におすすめ!