トルコ語を学んだ人がある人なら、おそらくみんな感じるのではないでしょうか-「なんか日本語と似てるね」
日本語は言語地図上、比較的似た言語が少なく「孤独言語」と言われます。韓国語とは少し類似点もありますが、その他、周辺の言語と比較して類似点が少なく「特殊」であり、すぐお隣の中国語とは似ても似つかない言語です。
そんな日本語が、遠く離れたトルコ語と似ている…、いったいなぜでしょうか。気になって、調べています。
トルコ語と日本語が似ている点
トルコ語と日本語が似ている点を列挙していくと、論文のようになってしまいそうなので、ここはざっくりとおおざっぱにまとめておきたいと思います。
文法がどちらもSOV
トルコ語も日本語も、文法的に「主語(S)+目的語(O)+動詞(V)」という順番になっています。英語や中国語の場合、「主語+動詞+目的語」となるので、その点では日本語とトルコ語を翻訳するときに、言葉の順序を入れ替える必要がありません。
ただし、SOVという順序だけの相違点なら他にも似ている言語は存在します。
母音の多用
トルコ語も日本語も母音が頻繁に登場する言語です。日本語の音節は基本的に「子音+母音」というシンプルなものがメインですが、トルコ語もそれに近いと言えます(子音+母音+子音となることも少なくない)。
ですので、聞いていると英語などに比べて母音が良く聞こえてくるはずです。つまり、トルコ語の発音はカタカナ表記しやすく、カタカナ発音でも通じやすいと言ってもよいでしょう。ちなみに、スペイン語も母音が多くカタカナ発音で通じやすい言語です。
発音が似た単語が多い
日本語とトルコ語のボキャブラリーを眺めてみると、意味も発音も似通った語彙が多いことに気づきます。日本語でいう「イイ(良い)」は、そのままトルコ語で「イイ」と言っても意味は同じです。
また、トルコ語で「外国人」は「ヤバンジ」といい、日本語の「野蛮人」を彷彿とさせます。そのほかにも学習を進めていくと、全く同じではなくても「なんとなく似ている」と感じさせる語彙がたくさんあります。
トルコ語の接尾辞と日本語の助詞
日本語は単語の後に助詞や助動詞をつけて意味を明確化します。この点はトルコ語でも同じで、「~へ」「~から」というように、単語に意味を付け加えるためには接尾辞を使います。
言語分類学上、このように独立した単語を助詞や接尾辞などで結び付けて文章を作る言語を「膠着語(こうちゃくご)」と分類します。この分類方法ではトルコ語も日本語も同じ「アルタイ諸語」に属しています(言語の分類に関しては諸説あり)。
トルコ語と日本語が似ている理由
なぜ、8,000キロも隔てたトルコと日本の母国語が似ているのか。
この理由についてはさまざまな説があるようですが、その昔トルコ系民族(遊牧を生業とした騎馬民族)が中央アジアから東アジアまで勢力を伸ばしていたことに起因するという説が有力のようです。
先に「アルタイ諸語」について述べましたが、アルタイ山脈は、現在の西シベリアからモンゴルに位置する山脈です。このエリアには、古くからトルコ系民族が入れ替わり台頭しました。
日本において、卑弥呼が王になったのは184年ですが、それより少し前の156年、遊牧騎馬民族である「鮮卑」がモンゴル高原を統一しています。モンゴル高原から日本列島までは地理的にやや離れていますが、日本の黎明期にこれらのトルコ系民族が影響を与えたと考えるのは、まったくでたらめでもないような気がしますね。
日本語に近いのはトルコ語だけではない
少し昔の言語分類学では、ウラル・アルタイ語族というカテゴリーがありました。現在の分類では、ウラル諸語とアルタイ諸語は分けて考えます。日本語は、その中でもアルタイ諸語に含まれると考えられています。
ウラル山脈は、アルタイ山脈の北西方向、ロシアの西部に位置しています。この辺りで勢力をふるっていた「マジャール人」という民族は、そののち西進してヨーロッパまでたどり着き、「ハンガリー」という国家を建設しました。
ウラル諸語と日本語との差がどのくらい開いているのは分かりませんが、言語的に同じファミリー(親戚)だと考えられていたこともあるくらいですから、日本語とハンガリー語(マジャール語)の間にも類似点があると考えられています。ちなみに、ハンガリー語も、ヨーロッパの中では孤立している言語です。
また、全然別の説として、日本語とヘブライ語が似ているという話もあります。これは、日ユ同祖論(日本人とユダヤ人の祖先が同一だという見方)に紐づいているトピックですが、これに関しては別の機会に書きたいと思います。
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