フランス国内だけではなく、世界中の多くの国や地域で話されているフランス語は、日本語と同じように、その土地によっていろんな方言があります。
フランス語の方言とアクセント
フランスは歴史上、独自の言語を持っていた地方が多くあり、現在でもそれらの地方言語を話す地域が残っていたり、それらの古い言語を保存する運動が起こっている地域もあります。
現在フランス国内では標準フランス語が浸透しているので、若い世代では理解できない程の方言はなくなりつつありますが、それでも各地で発音のクセや独特の表現などがあります。
さらには隣国のベルギーやスイス、北アフリカ、西〜中央アフリカ、カナダ、カリブ地域など世界中に広がったフランス語がそれぞれの特徴を持ちます。
そんなさまざまな地域のフランス語の特徴について説明すると、本になりそうなくらいお話が長くなってしまいそうですので… 今日は、筆者が実際に遭遇したフランス語の方言にまつわるエピソードをご紹介します。
5キロ?100キロ?
勤めていた会社で南仏出身の同僚と話していると、時々”???”となることがありました。5キロなのか100キロなのか、聞き分けられず勘違いしてしまうのです。
もともとオック語という言語が話されていたエリア=南仏では、その名残もあっていろんな訛があります。その1つの特徴として、鼻母音のenという発音が、標準フランス語だと”アン”と”オン”の間くらいの音になるのに対して南仏ではより”アン”に近い、明るい音になります。
そのために5=cinq kilo(サンクキロ)も、100=cent kilo(ソンキロ)もどちらも”サン キロ”に聞こえてしまって、100キロくらい離れている都市の話で「??そんなに近いわけなくない??」と混乱してしまいました。距離や値段で紛らわしいと、ちょっと困ってしまいますよね。
田舎者がバレる?パン・オ・ショコラ
パン・オ・ショコラというパンをご存知ですか? チョコレートをクロワッサンのような生地で包んだ、フランスでは定番の菓子パンです。
南仏の、上述のオック語のエリアより少し小さい地域になりますが、パン・オ・ショコラの事を”ショコラティン”と呼ぶ地域があります。
北の方の人にとっては、ショコラティンと呼んでいるのを聞くと「プッ。田舎者なのね。」と思ってしまうとか。例えばパリで「ショコラティンください」というと「パン・オ・ショコラですね」と言い直されてしまうそうです。
反対にPAULなど全国チェーンのパン屋さんでは、商品名にはパン・オ・ショコラと書いてあるのに、トゥールーズで「パン・オ・ショコラください」といって「ショコラティンですね」と言われてしまったこともあります。
地域愛を感じます。「PAULでショコラティンを頼んだら”パン・オ・ショコラですね”ですって!南に店を出してるんだからショコラティンって書けばいいのに、お高くとまってるわ!」と憤慨するトゥールーズの友人もいました。なんとも複雑な話ですね。。。
親切に、ショコラティンと呼ぶ地域の分布図を作ってくれたブログがあるので、参考までに。Chocolatines vs pains au chocolat
お昼にディナー?
カナダのケベック周辺にはフランス語が公用語になっている地域があります。ケベックのフランス語はケベッコワと言われますが、これがまた独特の発音や言葉づかいで、フランス語が話せてもケベッコワを理解するのはとても難しいです。
意外にも、カナダよりもフランスのフランス語の方が英語の影響を受けていて、単語のレベルではケベッコワのほうが古風なフランス語を守っているといえるかもしれません。
旅先のホステルで出会ったケベッコワの女の子。一緒に食事に行こうと誘ってくれたのですが、昼前なのになぜか”Tu va dîner?=夕食に行く?”って聞いてくるので、なぜこのタイミングでランチもまだなのに夕食?と疑問に思っていると、どうやら彼女は”ランチ”の意味で”dîner”と言っているようでした。
dînerしよう!と約束してひとりはランチ、ひとりは夕食のつもりでいたら、結局一緒に食事ができませんよね。
このように、ちょっとしたことでも方言のおかげで色んな出来事に出会います。最初にどの地域でフランス語を学習するかによって、その後のフランス語生活に大きな影響が与えられるので、留学先を選ぶときなどに方言のことも考慮すると楽しいかもしれませんね。
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執筆者:hanico(ペンネーム)
プロフィール:芸術・音楽・文化・食を愛し、英語を学びフランスに暮らした経験から、生きた外国語について楽しくお伝えしたいです。