「今のところ」「当面は」「目下のところ」などといった意味に相当する英語表現でよく使われるのが「so far」と「for now」です。どちらも正しい言い方ですが、意味とニュアンス、使い方にはやや違いがあります。さらに紛らわしい表現に「at the moment」といういい方もあります。
英語学習者の中には、so farとfor now、at the momentの3つを混同している人もいると思います。実際、私もよく使い方を間違えて、ネイティブに指摘されます。
どれも同じような意味あいですが、使い方を間違えると英語ネイティブにとってはちょっと不自然な英語に聞こえてしまうんですね。
「今のところ」「当面は」「目下のところ」という意味の英語フレーズso farとfor now、at the momentの違いについて、まとめてみました。
「今のところ」「とりあえずは」を意味するSo farとFor now、At the moment
so farとfor now、at the momentは三つとも「今のところ」「とりあえずは」「目下のところ」「当面は」という意味で使われます。
ニュアンスの違いは、近い将来に対する話者の予測です。
- at the moment:ニュートラル
- so far:近い将来の変化は考えにくい
- for now:近い将来変化が予測される
3つそれぞれの違いとニュアンスについては、例文を挙げて比較しますが、まずは一つずつの意味を確認しておきましょう。
At the momentの意味と使い方
一番分かりやすいのは、「at the moment」だと思います。これは単純に「今現在は=now」と同義だと考えて良いでしょう。
「今」というこの瞬間に照準を絞った言い方で、時間の幅としては、3つの表現の中でもっとも短い「点的」な時間だと解釈できます。文頭あるいは文末のどちらにも置くことができます。
(残念ながら、彼女は今ここにおりません)
(今のところ=目下、すべて順調だよ)
(新しい職場に今現在は彼女は満足している)
So farの意味と使い方
so farの意味は、「今のところ」「これまでは」です。似た表現に言い換えるなら「until now」となります。過去のある時点から今に向かってその状況が「これまでのところ」続いているという意味で使います。文頭あるいは文末のどちらにも置くことができます。
so farはどちらかというと「過去」に重点を置いた表現となります。過去のある時点から今までの時間の幅の中で「これまでのところ」「今のところは」という意味で使われます。
これまでのところある一定の状況が続いており、近い将来もしばらくの間はこのままの状況が続くのではないか、というニュアンスが加わります。すぐに状況が変化するとは思えないという話者の考えが反映された表現です。
(今月はこれまでのところ、2000ドル売り上げている)
上の例文は、今月の売り上げについて述べています。ここでso farは、今月の頭から「今日」までの期間を示しています。どちらかというと、今月の残りの期間このまま売り上げを伸ばしてくれるんじゃないかと話者が予測していることが感じられます。
(目下、すべて順調だ→それで、多分この状況がしばらくは続くだろう)
(今のところは、新しい職場に彼女は満足している→そしてそれは今後も続きそうだ)
so farを使ったフレーズに
(今のところ、いい感じ)
といういい方があります。これもポジティブな響きを持っています。
For nowの意味と使い方
for nowの意味は、「今のところ」「とりあえずは」です。日本語にすると意味はほとんど同じで、何が違うんだろうと思うかもしれませんね。
for nowには、今現在はこうだけれど、近い将来状況が変化するかもしれないと話者が感じていることがうかがえます。
(目下、すべて順調だ→でも、後に変化する可能性は否定できないが)
(新しい職場に今のところ彼女は満足している→しかし、それは長くないかもしれない)
また、英会話レッスンの終わりに先生がこんな風に言っているのを聞いたことがあるかもしれません。
(今回はここまで、じゃあまた次回ね!)
なお、for nowは疑問文には使いませんので、注意しましょう。
✕ How is your work going for now?
(これまでのところ、仕事はどう?)
So farとFor now、At the momentの違いと使い方
ここからは、三つの言い方を例文を挙げて比較してみます。例文の後ろに(?)マークがついているものは、文法的に間違っているわけではありませんが、あまり使わない言い方を示しています。
「残念ながら、彼女は今ここにいません」
取引先の会社に電話をかけたとき、相手がデスクにいないと彼女の同僚に告げられます。以下の例文はどれも「残念ながら、彼女は今ここにいません」という意味ですが、話者の予測に微妙な違いがあります。
- Unfortunately, she’s not here at the moment.
→彼女がいつ戻ってくるのか、戻ってこないのか、ぜんぜんわからない - Unfortunately, she’s not here so far.(?)
- Unfortunately, she’s not here for now.
→今のところは席にいないがすぐに戻ってくるかもしれない
for nowは、今の状況が近い将来変化するかもしれないと話者が考えているということなので、一番下のフレーズで返答が返ってきたら、話者は「彼女は間もなく戻ってくるかもしれない」と思っているということになります。
(あいにく、彼女は今ここにいませんが、すぐに戻ってくると思います)
このように、「もうじき戻ってくると思うんですけど」というフレーズに最も結び付きやすいのが「for now」の文です。
新しい職場はどう?と聞かれたら…
もし、転職した後、新しい職場の同僚に「How is your new job?(新しい仕事はどう?)」と聞かれたら、あなたは何と答えるでしょうか。
- Thank you, I’m enjoying working here at the moment.
- Thank you, I’m enjoying working here so far.
- Thank you, I’m enjoying working here for now.
上記は三つとも「ありがとう、今のところ楽しくやってます」という意味です。
1は特に問題ないでしょう。ニュートラルに「とりあえず上手くやってます」という意味で使えます。
2もいい感じです。新しい職場にいい感触を持っていることを伝えることができますので、質問してきた同僚もほっとするはずです。
一方、3はちょっとネガティブな感じに聞こえてしまいます。「今のところは楽しくやってるけど、将来はどうか分からないな」というニュアンスになってしまうので、こんなふうにいわれるとあなたの同僚は困ってしまうかもしれませんね。
その職場が気に入って、続けて仕事をしようと思っているなら、1もしくは2で返答しておくことをおすすめします。
上司に売上報告するなら…
次のケース、上司に今月の売上について尋ねられたとしましょう。あなたは何と答えるでしょうか。
- At the moment, we’ve made $2,000 this month.
- So far, we’ve made $2,000 this month.
- For now, we’ve made $2,000 this month.
「今月はこれまでのところ、2000ドル売り上げています」という訳になりますが、3の「for now」文は、このあと売上げが順調に伸び続けないかもしれないと話者が予測しているんじゃないかと感じられます。
上司としても、3の返答はあまり聞きたくないところかもしれません。3の文の後には、
(今月はこれまでのところ2000ドルを売り上げていますが、しかし…)
と、売上が下がるかもしれない予測とその理由が続くように思われます。
「so far」は、過去のある時点から現在への時間を意味しているわけですから、過去完了形(継続)とも相性がよさそうです。
お店で在庫確認したら…
何か買いたいものがあって、店舗で探したけど見つからないとき、お店の人に在庫の確認をしたいかもしれません。そんなとき、相手の反応がこうだったらどうでしょうか。
- Sorry, we don’t have it in stock at the moment.
- Sorry, we don’t have it in stock so far.(?)
- Sorry, we don’t have it in stock for now.
いずれも「すみません、現在のところ在庫を切らしていまして…」という意味です。でも、次にいつ入荷されるかに関する話者の予測が反映されています。
1は最もニュートラルな表現で、在庫が入るかどうかわからない、すぐ入荷するかもしれないし、入らないかもしれない。どの可能性も否定できない言い方です。
2は、文法的に間違っているわけではありませんが、あまりこのような言い方はしませんし、聞きません。
一方、3は「今は在庫ないけれど、そのうち入荷するだろう」と話者が感じていることが感じられます。
ですので、入荷を待つ消費者としては、3のフレーズが一番うれしいですね。
(すみません、今のところ在庫切れですが、間もなく入荷すると思いますよ)
と続きそうな雰囲気がします。
家族が手術を終えた直後…
家族の誰かが何か手術を受けたとしましょう。手術後、まだ少し痛みが残っている本人を横に、主治医はあなたにこういうかもしれません。
(今のところ、まだ少し痛みがあるかもしれません。でも、痛み止めがすぐに効いてくるはずですから)
とまあ、こういうシーンでは「for now」あるいは「at the moment」と言ってほしいですね。
So farとFor now、At the momentの違いまとめ
So farとFor now、At the momentはどれも「今のところ」「とりあえずは」という意味で使われますが、話者の将来に対する見通しという点でニュアンスが変わってきます。
- at the moment:ニュートラル
- so far:近い将来の変化は考えにくい
- for now:近い将来変化が予測される
3つの表現の差は小さく、あくまでも比較としてのニュアンスです。
でも、場合によっては、いい間違ってしまうとちょっと「バツが悪い」と感じてしまうこともあるので、うまく使い分けるようになりたいですね。