中国語で「お勘定」というと、「埋単(マイタン)」とよく紹介されています。この「埋単」と言うのはもともとは広東語で、北京語に輸入されたものです。「マイタン」とカタカナ発音でも、意外と通じるので、日本人の中国語学習者にとっても覚えやすいフレーズです。
「マイタン」は、漢字で書くと「埋単」となり、広東語では「単」は伝票などを指します。「埋単」は伝票に金額を書き込んで計算する=伝票を(数字で)埋める、ということから転じて「お会計する」というように使われるようになった、とする説が有力です。
「埋単」は広東語ベース、「結帳」は北京語ベース
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北京語のテキストでは、「埋単」と並んで「結帳(ジエジャン)」とも紹介されます。中国の辞書などでは、標準的なのは「結帳」で、「埋単」は方言だけれど、広く普及していると解説されているものもありました。
「結帳」の「帳」もお金に関する帳面や書式のようなことを意味しているといえます。Google翻訳で英語に翻訳すると「Account」と出てきます。つまり、「結帳」も「帳簿を締める」というようなニュアンスでしょう。文法的には、「埋単」も「結帳」も、動詞+名詞の組合せです。
「埋単」は、本来広東語ですから、当然香港や華南地方では通じやすいです。華北より北へ行くと、「埋単」といってもきょとんとした顔をされることがあります(特に田舎)。逆に香港や広東省で「結帳」と広東語読みで言うと、ばっちり通じます。
しかし、地域や店のグレードによっては、そのどちらも一般的でない場合もあります。
「埋単」「結帳」以外の言い方
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特に小さなレストランでは、あまり「埋単」も「結帳」も言っていなかったりします。
良く耳にするのは、「算一下」。
「ちょっと計算してよ」というニュアンスです。
立ち上がりながら、「多少銭?(いくら)」もしくは、「我走了(帰るよ、日本語的には「ごちそうさま」という感じでしょうか)」。
「我走了」と言うとなんとなく常連さんのように聞こえます。
さらに小さなラーメン屋やワンタン屋、屋台、夜市の出店などでは、だれも「埋単」とか「結帳」とは言いません。こういった店にはほとんどの場合、客の注文を書き留める伝票などないからだと、私は解釈しています。
お会計のシステムによって使い分けることも
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例えば、中級以上のレストランや飲茶では、テーブル席でお会計をします。この時は、「埋単」や「結帳」の方がスムーズです。ウエイトレスにそう伝えると、金額の入った伝票をテーブルまで持ってきてくれます。そこでお金を払います。
中級以下のレストランになると、レジカウンターに行ってお会計することが多いので、そんな時は「埋単」や「結帳」以外に「多少銭?」でもとても自然に聞こえます。
「多少銭?」も、中国語初心者が、必ずまず最初に学ぶフレーズの一つですよね。
「算一下」も使ってみて
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以外と便利なのは「算一下」という言い方。どこでもよく通じます。特に北部地方の小さな店では、「埋単」と言うよりも、ちょっとこなれた感じに聞こえるかもしれません。
ただし、広東語圏では通じません。「算」は北京語では「スアン」と読み、「計算する」と言う意味の動詞が第一の意味ですが、広東語の「算(スン)」は、「計算する」という意味ではあまり使われません。2つの言語の間で、少し意味のズレがある言葉です。