中国でテレビ番組を観ているとあることに気づきます。それは、ニュース番組やドラマなど頻繁に字幕が表示されていること。
字幕と言えば、例えば日本で外国映画を放送する際、映画の内容が理解できるよう演者のセリフに合わせて付け加えられるもの。つまり、他国語で話される言葉を自国語に書きかえて表示されるもの、という認識が一般的。
しかし、中国の字幕事情は必ずしもそれだけとは限らないようです。
なぜ国内番組なのに字幕が必要なのか
中国の番組では、字幕がよく表示されます。海外ドラマに限らず国内ドラマやニュース番組、報道の中の街頭インタビューで出る街角の人の話にも字幕がつくことがあります。
「外国語ならまだしも、自国語である中国語を話しているなら字幕はいらないのでは?」と不思議に思う人もいるでしょう。あるいは「聴覚障がい者のための字幕かな?」と思うかもしれません。しかし、けして聴覚障がい者のためばかりではありません。
耳が不自由でない中国人のための字幕放送でもあるのです。
北京語=中国語とは限らない?
中国は、北端はロシアに隣接し、南端は赤道近くにまでのびるほどの広大な国土をもち、いくつもの少数民族を含めた多民族国家。地方による方言も大きく違います。
地方とその方言を大まかに分けると、北京を含めた北部一帯の北京語、カンフー映画で馴染みのある香港地方の広東語、本土から海で隔たれた台湾の台湾語が、日本人にはイメージしやすいでしょう。
中国の、主に本土で使われる標準語は、中国国民の大多数を占める漢民族の言語で、主に北京語を基にしたもの。「中国語」のことを中国語で「漢語」(汉语:hàn yǔ:ハンュイ)とも言うのもそこからです。
また、同じ漢民族でも、住んでいる地方や地域による方言があり、日本語の方言とは比べ物にならないくらい発音も言葉も大きく異なります。
本土の北京と、北京以南の地方でも様々な方言や訛りがあるほか、さらにモンゴル地方、奥地の少数民族と、それぞれにそれぞれの言語があり、日常はその言葉を使います。
テレビ番組に字幕が必要な理由
たとえ同じ中国人同士でも、出身地の違う相手と話をする場合、その土地の方言では話が全く通じないということが起こり得ます。
そのため中国の人たちは、標準語である北京語を公教育の中で教わり、身につけるのです。普段日本語で話す日本人が、第二言語として例えば英語や中国語を勉強するのに近い感覚でしょう。(ただし使用する頻度はより生活に密着していますが。)
そうした広い国土の、各々が違う言葉で話す国民にニュースやドラマの内容を広く正確に伝えるため、標準語で話される内容をさらに字幕で補う。
これが、中国で放送されるテレビ番組に字幕が必要な理由なのです。
意外に日本も字幕国家?
最近は日本のテレビニュースやバラエティ番組でも、字幕がよく見られるようになりました。ニュースの概要だけでなく、出演者のコメントに見出しや字幕がつくことも。
編集技術の進歩などあるのでしょうが、意外にも、聴覚障がい者にとってその字幕が内容を理解するのに役立っているそうです。
また、「他の用事もしたいけどテレビの内容も気になるので、画面の見出しを見ながら面白そうなところでテレビの前に戻って来る」という、私のような欲張りな人間にとっても、この字幕はありがたいものです。