「すべて」という意味で使える「all」ですが、その使い方は意外と複雑です。
英単語の品詞分類としても、代名詞、副詞に加えて決定詞(determiner)という、複数の用法があるため、学習者は混乱してしまいがちです。
以前は「数量詞」として扱われており、私が学生のころも、「all」は「数量詞」として学習しました。ところが、最近では「決定詞」というカテゴリーができているようです(前からあったのかもしれませんが)。
「決定詞」という文法用語は覚えなくてもよいのですが、「all」の使い方を把握するために「決定詞」という考え方は役に立ちます。
―――とにかく、今回は、英語学習初心者にもなじみの深い「all」の意味と使い方、注意点について、まとめてみました。
決定詞としての All
「決定詞」とは聞きなれない言葉だと思います。決定詞は名詞の前に置き、その名詞を決定づける役割を果たします。
決定詞の中には冠詞、人称代名詞所有格、指示詞などが含まれ、数量詞である「all」もその一つです。
「all」は、決定詞の中でも「前置決定詞(predeterminer)」に含まれ、冠詞や人称代名詞所有格、指示詞など、その他の決定詞に先立って名詞句の先頭に置かれます。
決定詞としての「all」は、「すべての人」、「すべての数または量」、または「全体」などの意味で使い、可算名詞、不可算名詞の前に直接置くことができます。
All children can participate in this program.
(すべての子どもたちがこのプログラムに参加できます)
All items only cost 100 yen. = Each item only costs 100 yen.
(すべての商品は100円です)
All information provided is confidential.
(提供された情報はすべて機密です)
「information」は不可算名詞です。
一般的な人やものについて述べる場合、「all」のあとに直接名詞を置きます。
all the/人称代名詞所有格など
一方で、特定された(特定範囲内の)「すべて」である場合は、「all」のあとに「the」を置くことができます。
All of the students in this school will participate in the sports day.
(この学校の生徒は全員運動会に参加します)
All the items in this shop only cost 100 yen.
(このお店の商品は全部100円です)
「all」後に人称代名詞所有格やその他の要素が付くこともあります。
All my family live in Japan. = Everyone in my family lives in Japan.
(私の家族はみんな日本に住んでいます)
All these items cost only 100 yen.
(どれも100円で買えるものばかり)
all+時間表現
day, month, year, morning, afternoon, evening, night, spring, summer, autumn, winterなど、時間を表す表現に「all」が付く場合は「the」を付けません。
It was pouring with rain all day.
(一日中、雨が降っていた)
They were making noise all afternoon.
(隣人は午後の間ずっとうるさかった)
We spent all summer in our country house.
(私たちは夏の間中、田舎の家で過ごした)
all と all of ~
「the」や所有格、指示詞の前に「all」を置く場合、「all of」の形で用いることが多いですが、「all」だけでも間違いではありません。
All (of) those emails are spam.
(そのメールは全部スパムです)
He brought gifts to all (of) the workers in his company.
(彼は会社の従業員全員にプレゼントを持ってきた)
I got all (of) this furniture from the previous owner of this house.
(私はこの家の前の持ち主からこの家具を全部もらった)
(talking about the furniture) The previous owner left all (of) this.
(家具の話をして)(前の持ち主がこれを全部置いていった)
人称代名詞の目的格(us, them)や関係代名詞(who, which)の前に「all」を置く場合、前置詞「of」を置く必要があります。
This is for all of you.
(×) This is for all you.
(これは君たちみんなに)
All of them are Japanese.
(×) All them are Japanese.
(彼らはみな日本人だ)
I watched a few films on the airplane, all of which were boring.
(×) I watched a few films on the airplane, all which were boring.
(機内で映画を何本か見たが、すべておもしろくなかった)
一般論を述べる場合、不特定の複数名詞、あるいは不可算名詞の前に「all」を置く場合は常に「all」のみを用い「all of」は使いません。
All couples have their own story.
(×) All of couples have their own story.
(すべてのカップルにストーリーがある)
He wants to try all sports.
(×) He wants to try all of sports.
(彼はスポーツならすべて挑戦したいと思っている)
All information provided is confidential.
(×) All of information provided is confidential.
(すべての情報は機密事項です)
人称代名詞目的格+all
「all」で修飾する要素が文中の目的語として機能する場合、「人称代名詞目的格+all」あるいは「all of 人称代名詞目的格」の形で使うことができます。
ただし、文中の主語として機能する場合は「人称代名詞目的格+all」は使えません。
He put his money in the safe, but someone broke in and took it all.
He put his money in the safe, but someone broke in and took all of it.
(×) He put his money in the safe, but someone broke in and took all it.
(彼はお金を金庫にしまっておいたが、誰かが押し入りすべて持っていかれた)
Can you eat them all?
Can you eat all of them?
(×) Can you eat all them?
(それ、全部食べるの?)
All of us have a story.
(×) All us have a story.
(私たちみんなに物語がある)
代名詞としての All
「all」は、単独で用い代名詞として機能させることができます。
All were astonished by his performance.= Everyone was astonished by his performance.
(みんな、彼のパフォーマンスに驚愕した)
All will be posted in public within a couple of minutes. = Everything will be posted in public within a couple of minutes.
(すべては数分内に公に投稿されます)
この使い方はかなりフォーマルな場面で用いられます。通常の日常会話では「Everyone~」「Everything~」を使うのが一般的です。
all that ~
「all」の後に「that」で始まる関係節を置き「that節以下のことは唯一~」ということができます。
All (that) we need is to be patient and see what happens.
The only thing we need is to be patient and see what happens.
(私たちに必要なことは、ただ忍耐強くなりゆきを見守ることだ)
All that was required was the vaccine proof.
(要求されているのはワクチン接種証明書だけだ)
副詞としての All
「all」には副詞としての働きもあり、形容詞、副詞、前置詞句を修飾することができます。
The children all went to the sports festival.
(子どもたちは全員スポーツフェスティバルに行った)
The information that you needed was all sent by email.
(あなたが必要とする情報はすべてEメールで送られた)
These plants should all be harvested before October.
(これらの植物は10月までに全て収穫されるべきだ)
また、人や物が「すべて」という意味以外に、「完全に=completely」「すごく、まったく=extremely」という意味で使われることもあります(カジュアルな場面での使用が多い)。
Oh, dear. You got all wet!
(あらあら すっかり濡れちゃったじゃない)
She did it all alone.
(彼女が全部一人でやったんだ)
The forest is all covered with snow.
(森はすっかり雪に覆われてしまった)
You can blame me if you want. It was all my fault.
(責めてもいいよ。全部私のせいなんだから)
She got all upset.
(彼女はすっかり動揺してしまった)
All の否定形は部分否定
「all」の前に「not」を置いて否定形とする場合、「すべての~が~とは限らない」という部分否定になります。
Not all students learn English as a second language.
(すべての生徒が第二言語として英語を学ぶわけではありません)
They didn’t spend all their vacation at the beach.
(彼らは休暇中ずっとビーチで過ごしたわけではない)
The children were not all satisfied.
(子どもたちは全員満足しているわけではなかった)
正しく使いこなしたい All
「all」の使い方を、決定詞、代名詞、副詞という観点からまとめてみました。
頻出する単語であるにも関わらず、意外と使い方が難しいのが「all」です。慣れてくると自然に正しく使うことができると思いますが、それまではなんども復習することが大切だと思います。
というわけで、自分の復習という意味も含めて、今回は記事としてまとめてみました。お役に立てれば幸いです。