広東語には「ありがとう」という意味のフレーズがふたつあります。「多謝(ドーチェー)」と「唔該(ムゴーイ)」です。
広東語話者はこの二つの「ありがとう」をいつも使い分けているんです。しかし、広東語学習者にとっては、なかなか理解しずらいのが二つの「ありがとう」の違いです。
この記事では、広東語の二つの「ありがとう」、「多謝(ドーチェー)」と「唔該(ムゴーイ)」の違いと使い分けについて説明します。
二つの「ありがとう」使う場面が異なる
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広東語のテキストによると、人に何かしてもらったり、サービスを受けた時には「唔該(ムゴーイ)」と言います。
一方、「多謝(ドーチェー)」の方は人に金銭や物をもらって時に使います。
そう書くと「広東人はなんて現金なんだ」と思ってしまうかもしれません。確かに、サービスと金銭で「ありがとう」と使い分けるなんて、ちょっといやらしい感じもしますね。
人から気持ちをもらった時も「多謝(ドーチェー)」
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「多謝(ドーチェー)」は、確かに人から何かもらった時にかえす「ありがとう」です。しかし、お金や物だけではありません。
例えば、コンサートなどで、聴衆から盛大な拍手をもらった時は歌手は「多謝(ドーチェー)」と言っています。
また、ファンに向かって「サポートしてくれてありがとう」という時も「多謝(ドーチェー)」ですし、銀行などが顧客に向かって「いつもありがとうございます」という時も「多謝(ドーチェー)」です。自分が病気の時、友人や同僚から「お大事に」と言われたら、この時も「多謝(ドーチェー)」と返します。
つまり、「多謝(ドーチェー)」はお金だけでなく、人から心遣いやサポートをもらった時にも使うのです。
「唔該(ムゴーイ)」は軽い「ありがとう」
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では、「唔該(ムゴーイ)」はどんな時に使うのか。
例えば、レストランでウエイターに料理を運んでもらったとき、ホテルのドアマンがドアを開けてくれた時など「唔該(ムゴーイ)」と言います。
本来は、彼らの仕事なので、わざわざ「ありがとう」という必要もないといえばないのですが、相手の労働に対して、ねぎらうという感じのニュアンスです。
また、道端で荷物を運んでもらうのを手伝ってもらったり、食事の時に自分から遠い醤油を手渡してもらったりしたときも「唔該(ムゴーイ)」です。
混んでいる電車で席を譲ってもらっても「唔該(ムゴーイ)」と言うのが普通だと思います。
何となく、私の解釈では誰かの持ち物(お金、もの、気持ちなど)をその人から直接受け取った時は、「多謝(ドーチェー)」なのかな、という気がします。
広東人は無意識にこの二つの「ありがとう」を使い分けているのです。感謝の仕方にも文化が色濃く反映されていますね。