高層ビルが立ち並んでいる様子のことを「スカイスクレイパー」といったりします。「スカイ」は「Sky=空」ですのが、「スクレイパー」はどういう意味なのかご存知でしょうか?
これは、動詞「scrape」から派生したものですが、同じような意味の動詞に「scratch」があります。scrapeとscratchの違いについてもまとめて紹介します。
スカイスクレイパーの語源
スカイスクレイパーは英語でも「skyscraper」といい、超高層ビルがそれが立ち並ぶ様子を意味しています。この「skyscraper」を分解すると、「sky」と「scraper」に分かれます。
「sky」は空という意味で、特に問題はないと思います。
一方、「scraper」はあまり見かけない単語かもしれません。これは、動詞「scrape」から派生した言葉で、「scrape」するモノという意味になります。じゃあ、「scrape」って?
「scrape」の意味と使い方
この動詞、私もあまりよく知りませんでした。でも、カナダに引っ越して間もなくのころ、こちらの人はわりと何でもDIYするので、家の塗装塗替えも自分たちで行います。その時に、言われたのが、
(僕たち、まず壁をscrapeして古いペンキを取らないとね)
つまり、新しいペンキを塗る前に、古い塗料をはがさなくちゃいけないという意味です。
scrapeは、「鋭いものやざらざらしたものでこすって落とす、磨く、削る」という意味になります。
実際に、私も壁に残った古い(はがれかけの)塗料を「scrape」しました。先が鋭くなったヘラのようなもので、ペンキをこそげ取っていきます(おそろしく不快な音がする)。「これがscrapeという動作か…」と思いながら。
scrapeとscratchの違い
「鋭いものでこする、削る」という動作について、似たような動詞にscratchがあります。scrapeとscratchは、どう違うのでしょうか?
scratchの意味を調べてみると、「爪などの鋭いものでひっかく、傷をつける」とありました。
つまり、2つの単語の違いは、scratchの方が先のとがったものでひっかく、というイメージに近く、scrapeは比較的幅の広い範囲にわたって傷をつける、こするという意味になるようです。
He scratched his car with his key.
この2つの文はどちらも、「彼が車に傷をつけた」という事実を説明していますが、傷の具合や形状が異なるのが想像できますか?
scrapeの方は、主に木や他の車、壁などに擦って傷をつけてしまったとき、scratchよりも広範囲な「こすり傷」のイメージです。それに対してscratchの方は、爪やカギなど先のとがったものによる「ひっかき傷」ですね。
scrapeとscratchの使い分け
頭や体をポリポリ掻くのも「scratch」です。蚊に刺されたところをボリボリ掻いている子供に向かってお母さんはこういうかもしれません。
(蚊に刺された箇所を掻いちゃダメ)
scrapeの意味、scratchとの違いがなんとなくイメージできたでしょうか。
スカイスクレイパー(skyscraper)は、「空を、ビュッと擦って付けた傷のような高いビル」という意味から発生した言葉なのですね。なかなか、おもしろい言葉だと思いませんか?
日本語と中国語の「摩天楼」
ちなみに、日本語では「摩天楼」といいます。これは中国語でもそのまま通用し「mó tiān lóu」と読みます(摩天大楼ということもある)。
「摩」には擦るという意味がありますから、英語をそのまま翻訳した言葉のようですね。ついでにいうと、中国語で「天」は「空」、「楼」は「ビル」の意味です。日本語にも通じますよね。
スカイスクレイパーを最初に「摩天楼」と訳したのは、日本人なのか中国人なのかわかりませんが(多分、中国人っぽいよね)、なかなかセンスのある訳語ですね。