英語学習法の一つに「ディクテーション」という方法があります。
ディクテーション(dictation)とは、テキストを見ない状態で英語音声を聞き取り、文章に書き起こす作業のことを言います。
今回は、英語学習に役立つディクテーションのやり方について、紹介します。
ディクテーション(dictation)とは
私がこの方法をはじめて実践したのは、大阪で中国語の翻訳通訳講座を受講したときのことでした。
コースの受講生には、中国語音声によるエピソードが吹きこまれたカセットテープ(時代を感じさせます)が配布されました。
そして、毎回1エピソードずつディクテーションしてレッスンに臨むことが宿題となっており、レッスンにおいて受講生はディクテーションした文章を順番に一文ずつ読み上げていき、答え合わせするのです。
―――私にとっては冷や汗が出るくらい、緊張感高まる瞬間でした。
ともかく、ディクテーションは、このように翻訳通訳者養成の過程でよく実践されている訓練法なのです。
プロとして翻訳通訳者を目指していない学習者にも非常に効果のある学習方法ですので、中級者以上へとレベルアップしたい人には強くおすすめします。
ディクテーションの正しいやり方
聞いた文章をそのまま書きとっていくのがディクテーションのやり方になります。
まず、シナリオ(テキスト)を見ずに音声素材全体を聞き流します。この段階では、文字を書きとるのではなく、文章の大意を把握することを目的とします。
ここをスキップして、いきなり書き取りをはじめることも可能です。
でも、少し時間がかかるようでも最初に文章全体の意味を把握しておく方が、ディクテーションする際のミスも少なくなります。特に初期の段階では、ざっと全体を聞いてから細かい部分に分解して書きとっていくことをおすすめします。
全体の意味がなんとなくつかめたら、音声を小刻みに一時停止しつつ、耳に入ってくる英語を片っ端から書きとっていきます。
聞こえる英語を完全にすべて書き出すこと。これがディクテーションの目指すところです。
文章の書き起こしが完成したら、テキストを見て答え合わせをします。
ディクテーションの学習効果
私が考えるディクテーションの最大の学習効果は、自分の弱点が浮き彫りになるということです。
ディクテーションは、英語の総合力を試す訓練方法です。
文章を聞いて書き起こすのですから、当然ながら高いリスニング力が求められます。しかし、リスニング力だけではダメで、正しい英文を書くための文法力、スペリング、語彙や表現力が求められます。
ディクテーションをする上で間違える箇所が、すなわち自らの英語の弱点なのです。
「聴くこと」と「話すこと」は表裏一体といわれます。通常、私たちは自分が発音できる音しか正確に聞き取ることはできないのです。
例えば英語において「r」と「l」の発音が聞き取れない人は、それらを正しく区別して発音できていないことを意味します。「a」や「the」などの冠詞がよく抜け落ちる人は、英語を話すときにこれらの冠詞が上手く使えていない可能性が高いです。
ほんの短い文章でも、ディクテーションをすることにより英語学習における弱点が露見するため、自分にとって今必要な学習法は何かということが明らかになります。
ディクテーションを繰り返し実践することは、自分の欠点を補うための効果的な学習に結び付き、結果的にバランスのよい英語総合力が身につくと思うのです。
ディクテーションに向く素材の選び方
先ほどもいいましたが、最初にこの学習方法を知ったのは、中国語を勉強していた時です。そして、フランス語学習の際にも自宅での独学方法としてディクテーションをやっていました。
そして最近になって、英語もディクテーションに挑戦しています。
ディクテーションにおすすめな英語音声素材の選び方として、注意したいのは以下のような点です。
- (できるだけ)正しい英語であること
- 英語ネイティブの発音であることが望ましい(特に初期段階)
- シナリオ(テキスト)の確認ができるもの
- スピード調整ができればよりベター
最も大切なことは、音声だけではなく、シナリオ(テキスト)が確認できる素材であることです。
テキストが手に入らない音声素材の場合でも、ネイティブに書き起こした文章をチェックしてもらえる環境にあるなら問題ありません。
ディクテーションはやりっぱなしではダメで、答え合わせをして初めて学習効果が得られます。ですから、音声素材のシナリオが文章として用意されているものを使うようにしてみてください。
もちろん、自分の英語力にふさわしいレベルのものを選ぶことも大切です。容易すぎるものでは学習効果が小さくなってしまいますし、難しすぎるものは時間だけを消費することになります。
ポッドキャストや英語学習のためのスマホアプリなど、使えそうなものはたくさんあります。ご自身のレベルにあったもので試してみてください!