ジェンダーというと、以前は男と女の2種類しかありませんでしたが、最近は「その他(Gender Neutral)」というカテゴリーをよく見かけるようになりました。日本でも、いわゆる中性者のためのトイレに関して、いろいろな議論が起こっていますよね。
海外では男、女、中性と3種類のトイレを設置している場所は、いたるところに見られます。つまり西洋の方が、早くからこの問題にオープンに対応してきたわけですが、英語表現に関しては、まだまだ確定されていないようです。
常に性(ジェンダー)を気にする英語表現
英語を学習するとき、まず覚える単語が人称代名詞ではないでしょうか。I(私)、You(あなた)、He(彼)、She(彼女)…、基本中の基本ですよね。しかし、ここにすでに性別の問題があります。英語では、3人称単数を表す場合、必ず男性か女性を意識して使い分けないといけないからです。
性別を持たない代名詞として「It」がありますが、これは基本的に人には使用しません。物やペットに対して用いる単語ですので、人物に対して使用するとたいへん失礼なことになります。
第3の性別に相当する人称代名詞とは
では、男性でも女性でもない性別の人を表す際、英語では何と言えばいいのでしょうか。
人によっては「They」を使うようです。Theyは3人称複数形の人称代名詞で、男性・女性・その両方が混ざった人々の意味で使うことができます。男性でも女性でもない人を表すとき、たとえその人が一人(単数)でも、「They」を用いて表現することがあるようです。当然、動詞活用はTheyの動詞活用になります。
ただし、これはたとえ英語ネイティブ同士の会話でも混乱を避けられないというデメリットがあります。
英語のジレンマ
なぜなら、Theyといってしまうとどうしても「複数」というニュアンスになるからです。ですので、あたかもその人物が「複数の性別を所有している」かのような印象を与えることにもなりかねません。
その点、日本語は便利です。必ずしも性別をはっきりさせないで第3者を表すことができますからね。例えば「あの人」とか「その人」とか。
固有名詞の繰り返しを嫌う英語
また、日本語の場合、人称代名詞を使うのではなく、その人の名前(固有名詞)で表現することも多いです。田中さんとか、まきちゃん、とか…。英語の場合、ファーストネームで表せば性別を気にすることはありませんが、ファミリーネーム(苗字)で呼ぶ場合は、これがまたMrとかMissなど、性別が関係してきます。
さらに英語の特徴として、名詞の繰り返しを嫌うという点があります。会話の中で、何度も繰り返し「Miki」とか「Kenji」が出てくるのを嫌がるんです。できるだけ早く「He」や「She」で置き換えたくなるのが英語です。
じゃあ、どうすればいいの?
では、HeにもSheにも当たらない人のことを話題にしたいとき、どうすればいいのでしょうか。
私は、できるだけ本人たちがどう呼ばれたいかを意識して使い分けるようにしています。彼らパートナ同士が、お互いを指して「He」や「She」を使っているんであれば、それに同調するようにしています。
また、どっちを使う方がいいのかわからないときは、ひたすらその人の固有名詞を連発します。英語として聞きづらくても、その方が誤解を招きにくいと思いますから。
それにしても、ここまで第3の性別がオープンになってきたわけですから、英語において、人物として中性を表す人称代名詞が創り出される日が来るかもしれませんね。