Japan’s Secret Shame-日本の性犯罪と法制度の闇【BBC英語記事で読む日本のこと】

Japan’s Secret Shame-日本の性犯罪と法制度の闇【BBC英語記事で読む日本のこと】

2018年6月28日、イギリスのメディアBBC Twoで、一人の日本人女性に関するドキュメンタリーが放映されました。

ある日本人女性が起こした性犯罪訴訟をモチーフに、日本の性犯罪を取り巻く環境を深く浮き彫りにした作品です。

訴えたのも訴えられたのも日本人で、事件が起こったのも日本であったのにも関わらず、なぜ英国のBBCでしか、ドキュメンタリーとして取り扱われなかったのか。その答えは、タイトルにも現れていますー「Japan’s Secret Shame(日本の秘められた恥)」。

英語学習初級者にも分かりやすいこのタイトル、まるで日本の視聴者に向けてつけられたタイトルのようにも感じます。

英語学習者でなくても興味を持つべきこの問題、英文記事として書かれた、「Japan’s attitudes to allegations of sexual violence are locked in the past」を原文で読みます。

 

 

事件のあらまし

Japan's Secret Shame

記事を読みやすくするために、事件のあらましについてまとめておきます。

イギリスBBCが取材した日本人女性は、伊藤詩織(Shiroi Ito)氏。彼女は2015年4月、当時日本の大手テレビ局のワシントン支局長だったY氏(ドキュメンタリーや英文記事の中では実名で書かれています)に強姦されたと、警察に被害届を出しました。

Y氏には、一旦は逮捕状が出されましたが直前に逮捕は取り消され、2016年7月に不起訴が確定しました。

2017年5月、伊藤氏は記者会見を開き、不起訴処分に不服を申し立てたことを明らかにします。しかし、その申し立ての結果も「不起訴相当」ということになり、刑事訴訟ができなくなった現在、民事訴訟で戦っています。

BBCドキュメンタリーJapan’s Secret Shameについて

今回のBBCドキュメンタリーは、伊藤氏のケースをモチーフとしていながらもそれだけにとどまらず、性問題を取り巻く日本の警察、政府の対応や司法方面においても深く掘り下げて問題提起をしています。

現在、このドキュメンタリーはBBCの公式サイトで視聴ができますが、イギリス国内でしか視聴することができません。そのため、(この記事投稿時点では)日本を含むイギリス以外の国に居住している人は部分的な動画しか見ることができなくなっています。

お住まいの国によっては、オンライン動画が視聴できるようになるかもしれません。気になる方は英語タイトルJapan’s Secret Shameで検索してみてください。

 

伊藤氏の英文記事を読む

動画を全編見ることはできなくても、以下の記事はBBCTwoの公式ページで読むことができます。

英文ですが、比較的容易な単語が多く使われているので、読みやすい記事となっています。ちょっと長いですが、キーとなる単語を理解しておけばそれほど難しくはありませんので、挑戦してみてください。
 

性的暴力に関する英語表現

この記事では「性的暴力」にあたる表現が何度も出てきますが、3種類の表現が使われています。

sexual violence:性的暴力
sexual assault:性的暴行
sexual harassment:セクシャルハラスメント

言葉のニュアンスは微妙に違いますが、どれも「性的暴力」を表しています。英語では、同じ表現を繰り返して用いるのは好まれないので、いろいろな表現方法を知っておくと読解に役立ちます。

 

キーとなる英単語

英文記事を読む際に、キーとなる英単語をピックアップしておきます。

attitude:態度、動向、受け止め方

「social attitude(社会態度、社会の受け止め方)」という表現も出てきます。

allegation:申し立て、主張、陳述
sexual violence:性的暴力

investigator:捜査官、捜査する人
interrogation:捜査
investigate:捜査する

compassion:同情、哀れみ、共感
drop it:やめる、忘れる(=forget it)

*記事内では数回登場し「レイプ被害届出をあきらろ」という意味で使われてます。

 

denying my account:私の主張(言い分、証言)を否定している

sergeant:巡査部長
distressed:動揺して

obvious:明らか
a concrete reason:具体的な理由

complaint:訴え、告発
relented:折れる、やわらぐ

 

exhausted:疲れ切った
appropriate:適切な
relevant:関連した、適切な
conviction:有罪判決

 

accuse:訴える、告発する

prosecutor:検察、検察官
bring charge:起訴する、告発する

reveal:明かす、明らかにする、暴露する
sexual assault:性的暴行
legal system:法制度
social attitude:社会態度、社会の受け止め方
parliament:議会
amendment:改正
consent:同意

*consent:同意について
この文脈の中では、性交渉においての「同意」という意味で使われています。記事内では詳しく書かれていませんが、ドキュメンタリーの中では日本の法律の中で性交渉に関する「同意」についての記述がないことを問題として取り上げている部分があります(後に詳しく説明します)。

 

euphemisms:婉曲
tricked:だまされた、やられた
violated:犯された
invisible:目に見えない
rape crisis center:レイプ被害者支援センター
adjacent:隣接した
moral support:心の支え、精神的な支援

detached:分離した、公平な
dispassionate:冷静な、客観的な→副詞はdispassionately
condemnation:非難

 

bank of flash bulbs:フラッシュバルブ(せん光電球、写真のストロボのことと思われる)の堤防

ここでのbankは「銀行」という意味ではなく、「堤防」「積み重なったもの」の意味。「ストロボの堤防の前で表明してから」という内容から、記者会見のことを指しているものと思われます

 

sexual harassment:セクシャルハラスメント
overwhelmingly:圧倒されるような
anonymous:匿名の
aggression:攻撃、敵意
backlash:反動、反発、逆風
stepped down:~の地位を降りる、退く
dare:あえて~する
Nevertheless:それにもかかわらず
stigma:汚名、不名誉

shifting role:役割移行
the shackles of social convention:社会的慣習の足かせ

 

lifesize mannequin:等身大の人形
re-enacting:もう一度上演する

 

ドキュメンタリー「Japan’s Secret Shame」というタイトル

秘密

ドキュメンタリーのタイトル自体は「Japan’s Secret Shame」という端的なタイトルが付けられています。

この「Shame」は日本語にすると「恥」という意味ですが、日本人は「恥」や「恥じらい」「恥ずかしい」という言葉をよく使いますね。一方「Shame」という単語は英語ネイティブの会話でそれほど頻出する単語ではありません。

ですので、このタイトルは英語が分かる日本人にとってはとても「引っかかる」タイトルなのではないかと思います。

私は海外在住ですので、2017年の5月に彼女が記者会見した時のことを知りません。その時の社会の反応に関しても一切知識がありませんでした。でも、BBCドキュメンタリーのこのタイトルは、私の心に「刺さった」んです。

Rapeの定義とconsent(同意)について

Rapeを日本語に訳すと「強姦」となります。ただし、日本の法律や判例における「強姦」の定義は、必ずしも英語の「Rape」とは一致しないようです。

英語のRapeの定義は、法律的な定義、医学的な定義といろいろありますが、Cambridge Dictionaryでは以下のように定義されています。

rape:to force someone to have sex when they are unwilling, using violence or threatening behaviour

unwillingは「不本意な」という意味です。つまり、同意(consent)無しに、ということです。

ドキュメンタリーによると、日本の場合、見ず知らずの人に突然襲われた場合は、「強姦」として認められることは比較的難しくありませんが、それが知り合い同士の間で起こった場合や、アルコールが関連している場合には、「強姦」の事実を認めさせるのは困難だという現状が指摘されています。

また、日本の強姦に関する法律やこれまでの判例において、強姦罪(レイプ)が成立するためには、被害者が激しく抵抗したことを証明しなくてはならないという事実があります。これは、当事者にとっては恐怖で身がすくんだり声がでなくなることが往々にしてあるということが、まったく考慮されていないとも。

2017年、日本の強姦にかかわる法律が100余年以来初めて改正されました。改正後の新法律にも「同意」について言及する部分はないと、この英文記事では語られています。

コトバとジャーナリズムいう武器が彼女に自由を与えた

Black Box (文春e-book)

伊藤氏には、英語とジャーナリズムという武器がありました(ちなみに彼女の著書によると、彼女はスペイン語も堪能らしい)。

日本語は論理的思考にはいささか不利になる言語だと私は感じています。それは、日本語そのものが悪いのではなく、それまでの歴史や習慣がそうさせているもので、今後変わっていくものかもしれません。

「女としての落ち度」は英語でどういう?

ドキュメンタリーの中に登場する、日本のある女性議員の言葉に「男性と二人でお酒を飲んで酔いつぶれてしまう彼女には”女としての落ち度”があった」というような内容のセリフがあります。「女としての落ち度」と聞くと、もっともらしく聞こえ、「あれ、そうなのかな?」と勘違いしてしまいそうになります。

この落ち度は、英語字幕では「error(エラー)」と訳されていましたが、英語字幕を読むと彼女の主張に対して非常に不可思議な印象を受けます。

日本人は精神論や感情論が好きですよね。そうやって論理を煙に巻こうとする…、私も日本人上司の元で働いていた時には経験したことがあります。

英語で考えて英語で発信する

英語には英語的思考回路があります。ロジックな思考には英語が向いています。もしあなたも日本語で何か言われて言いくるめられそうになったら、一度英語で思考してみることをおすすめします。

伊藤氏は、BBCのドキュメンタリーの中で、日本語と英語を上手に用いて、自分のストーリーを展開していきます。

通訳や翻訳ツールを介さず自分の言葉によって英語で発信できれば、世界中の英語話者15億人に、ダイレクトにメッセージを伝えることができるのです。

日本社会は圧倒的に男性優位

記事の中で、日本のマスコミ業界は男性優位(male dominated=男性優位の、男性支配の、男性中心の)という表現が出てきます。

日本語のインターネットの世界も男性優位かもしれません。ですので、女性専用車両とか電車の痴漢問題になると男性目線の記事が増え、多くの女性はそれに対して沈黙しています。

そのような反応を見て、それが大多数の意見のように勘違いする人もいるかもしれませんが、そうではありません。

「忍耐強さ」は本当に日本の美学なのか

日本人は「みんなと同じ」ことに安心する傾向があります。企業にクレームを付けた時、上司に意見した時、市役所で押し問答になった時「みなさんそうされていますよ」といわれて、納得したことはないでしょうか。どうしてそこで、「みんなは我慢できても私は我慢できない」と言えないのか。

外国人によく、日本人は忍耐強い(patient)、規律をよく守る=しつけがなっている(disciplined)、勤勉(hard‐working)と褒められることがあります。私も海外でそう褒められると、日本人として誇りに思います。しかし…

「みんなそうだから」と、痛みやつらさを我慢することが、何かの役に立つのか?―と、伊藤氏もドキュメンタリーの後半で疑問を投げかけています。

そういう時にこそ「本当にこれでいいのか?」「私の直感は間違っているのか?」と反問することが大切なのではないでしょうか。

日本語の呪縛にかかっているなら英語で思考してみてください。もちろん、中国語でもドイツ語でもかまいません。そこには、日本社会のトリックから完全に乖離された突破口があるかもしれません。

 

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