新型コロナウイルスの感染拡大予防対策として、今では世界中で採用されているのがマスクの着用です。マスクは英語でも「mask」といいますが、公には「face covering」といういい方が一般的です（日常会話では「mask」で十分通じます）。
今ではこの言い方にも違和感がなくなりましたが、なぜ「mask」ではなく、「face covering」が用いられるようになったのか考えてみました。
英語の「mask」の意味
日本語で「マスク」というとたいていの人が、風邪をひいたときや花粉症対策のために、鼻と口を覆うマスクを思い起こすと思います。でも、英語の「mask」は意味の範囲が広く、仮面舞踏会やハロウィンパーティーなどで使う仮装用の被り物も「mask」の範疇に入ります。アイマスクもいってみれば「mask」の一種ですよね。
そのため、英語で「mask」をつけましょうといっても、英語ネイティブみんなが感染予防のためのマスクだと解釈するとは限らないかもしれません。
WHOがマスク着用を推奨しなかった理由
新型コロナウイルスが流行し始め、WHOによるパンデミック宣言が行われました。私の記憶では、パンデミック宣言が行われるはるか以前から、アジア各国ではマスクや手指消毒剤が不足し始めました。
マスク不足を世界的にしないためにWHOは当初、マスク着用に感染予防効果があることを認めませんでした。マスク（英語ではface covering）着用が推奨されるようになったのは、ずっと後のことだったと記憶しています。
なぜ、WHOが最初からマスク着用を推奨しなかったのか。その理由は、すでにアジア各国で医療関係者のマスク不足が深刻化していたためです。もっとも感染リスクが高い環境にある医療従事者からマスクを奪わないために、医療用マスクの感染予防効果について明言するのを避けていました。
マスクは英語で何という？
仮装用マスクと区別して、英語では「face mask」あるいは「surgical mask」といういい方が一般的で、厳密に表現したいときにはマスクの品番が用いられることもありました。
「感染予防のために公の場所ではマスクを着用しましょう」と英語圏でも叫ばれるようになったあとも、医療従事者から医療用マスクを奪わないために、医療用マスクではなく布製マスクや手作りマスクが推奨されました。
実際にそのころは、布製マスクを着用している人がほとんどで、医療用の使い捨てマスクはかえって着けて出歩くのがためらわれるくらいだったんです。
WHOでも、医療用マスクを彷彿とさせる「mask」ではなく、その機能に重点を置いて「face covering」という表現を用いるようになったのではないかと思われます。とにかく、顔、特に鼻と口を覆うことが重要視され、そのためにはバンダナやスカーフを顔に巻き付けるのでもよいというニュアンスだったと覚えています。まさに、「face covering」ですね。
公の場では「face covering」がよく使われる
さらに、広義では顔全体を覆うプラスチックシールドや、アイプロテクター（ゴーグル）も「face covering」に含まれるでしょう。
そのような経緯があって、英語圏ではすっかり「face covering」という表現が定着しました。
今では、布製マスクよりも医療用マスクの方が感染予防効果が高いことが明らかにされました。それでも「mask」といってしまうと、日本の「お面」などもマスクに入ってしまうので、公の場では「face covering」という表現を「感染予防用のマスク」として使用しているものと考えられます。
ただし、カジュアルな日常会話の中では「mask」も、日本語でいうところの「マスク」と同じ意味で使われるようになってきています。
ちなみに、私が今滞在しているイギリスでは、すでにマスク着用は義務ではなくなっているようです。お店でも、サッカースタジアムのように大勢が集まる場所でも、マスクをつける人はごく少数。いちおう、インドアでは「face covering」の着用が推奨されすという内容の放送が流れるんですけどね…
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