先日オウム死刑囚7名の死刑執行が行われたという報道がありました。
日本は、先進国の中でも死刑制度を保持している稀有な国ですが、これに関して英語ネイティブとディベートをする機会も増えるかもしれません。
そこで、死刑執行や死刑廃止論に関する英語表現をまとめてみました。
普段日本人はこういった問題を議論することを避ける傾向にあります。しかし、これを機会に死刑制度について、ちょっと考えをめぐらせてみるのも悪くないと思います。
英語ネイティブや外国人と、死刑制度の是非について、あなたの意見を戦わせてみてはどうでしょうか。
死刑/死刑執行は英語で何という?
死刑という英語は「the death penalty」という言い方と「capital punishment」という表現があります。「the death penalty」は「死刑」の直訳的な言葉になります。一方の「capital punishment」には「極刑」という意味も含まれます。
死刑を執行するという言い方は「execute」という動詞を使います。
名詞形は「execution」です。似た単語に「excursion」がありますが、これは「遠足」とか「修学旅行」を意味し、まったく違う意味になるので、注意しましょう。
「彼は死刑を言い渡された」という時には、「sentence(~に判決を言い渡す)」という他動詞を使って、
というふうに表現することができます。
死刑制度についてどう思う?と聞かれた時に英語で答える方法
外国人の中には、日本がいまだに死刑制度を保持していることを知らない人もいます。ですので、今回のような報道があると、日本人の死刑に対する考え方をストレートに聞いてくる人も少なくありません。
(死刑制度について、どう思いますか?)
と聞かれたら、どんな風に答えるとよいでしょうか。
英語で議論やディベートをする場合、まず最初に自分の意見をはっきりと述べるようにします。自分の立場を明確にしたうえで、その理由を述べます。
死刑制度に賛成の場合
(死刑制度はあった方がいいと思う、なぜなら…)
賛成の立場でありながらも「it is better to~」という比較級を使うことで、表現が少しやわらかくなります。
「~の方がいい」という言い方になり、「どちらかというとあるほうがいい」という、マイルドな賛成になります。
(死刑制度は必要です。どうしてかというと…)
こちらはもっと断言的です。「necessary」は「必要な」「なくてはならない」という形容詞です。「We need to have the death penalty.」ということもできます。
死刑制度に反対の場合
(私は死刑制度は保持すべきではないと思います。なぜなら…)
「should not have」という言い方をしているので、比較的強い反対の意見です。
(私の意見としては、日本は死刑を廃止するべきです。なぜなら…)
「abolish」は「(制度や法律を)廃止する」という動詞です。はっきりと反対の立場を表明することができます。
その他
自分の意見として断言を避けたい場合は、一般的な日本人はどう考えているのかについて、語る方法もできます。
(日本では多くの人が死刑制度は必要だと信じています。その理由は…)
死刑廃止論者の論点
「死刑廃止」を英語にすると「abolition of capital punishment」となります。
死刑存廃については海外ではよく語られるトピックなので、死刑廃止論者の論点はだいたい決まっています。ここでは、アムネスティインターナショナルの英語記事から抜粋して、死刑廃止の根拠についての例文とさせていただきます。
(死刑は取り返しのつかないことで、間違いが起こる可能性もある)
「reversible」は日本語でも「リバーシブル」と言ったりしますが、「裏返しにできる」「可逆な」という意味の形容詞です。その反対形「irreversible」は「取り返しのつかない」「不可逆な」という意味になります。
(死刑は犯罪の抑止にはならない)
「deter」は「阻止する」という意味の動詞ですが、犯罪抑止という表現をするときには、「deter crime」という言い方をします。後述しますが、犯罪抑止力はその名詞形(形容詞でもある)の「deterrent」を用います。
(死刑は差別的である)
「discriminatory」は「差別的な」という形容詞です。名詞形は「discrimination」で、人権問題を話題にするときの必須単語です。
(死刑が政治の道具として用いられることもある)
私たちも日本語で「政治の道具」という言い方をよく耳にしますが、英語でも直訳的な表現で通じます。
死刑廃止論で挙がるのは以上のような理由が多いです。さらにツッコんで議論したいという人は、原文を参照してみてください。
死刑賛成論者の論点
一方、死刑に賛成する人の意見にはどのような理由が挙げられるでしょうか。
先進国においては、日本の他にアメリカ合衆国にも死刑制度があるので、死刑賛成派の意見も英語サイトでピックアップできます。
中にはあまり知的に聞こえない意見もありますが、言っていることは分かりやすいと思うので、例文として紹介します。
(死刑は被害者とその家族にとって、一つの終結を意味する)
「closure」は「終結」「閉鎖」という意味の名詞です。日本語的にいうと「一つの区切り」と訳すのもしっくりくるかな、と思います。
「被害者とその家族」は「victims and their families」という言い方をするので、このまま覚えてしまうと便利です。
(彼らは死ぬべきだ。さもなくば、また同じことを繰り返すだろう)
ちょっと乱暴な表現ですが、言いたいことは伝わります。「could」は「可能性がある」という意味ですが、「will」に置き換えると「ほぼ間違いなく同じことを繰り返す」という強い表現になります。
(死刑制度は容認されるべきだ。なぜなら、彼らは社会に何も貢献しないんだから)
ここでの「彼ら」は「死刑を言い渡される犯罪者」の意味。死刑制度に賛成する立場を表明するのに「should be allowed」という表現をしています。
(死刑制度が無くなれば、彼らは一生刑務所に入れられることになる。その場合、彼らを一生食べさせるために私たちの税金が使われることになる)
「feed」は「食べさせる」「餌をやる」という意味の動詞です。余談ですが、赤ちゃんに母乳を与えることは「breastfeeding」といいます。
(死刑制度は強い犯罪抑止になる)
先述した「deter」の名詞形です。「a crime deterrent」で「犯罪抑止力」という意味で使います。
(目には目を)
聖書にも出てくる言葉らしいです。
2018年7月オウム死刑囚の死刑執行について
今回のオウム死刑囚7人の死刑執行について、海外のメディアでも大きく取り上げられました。
Tokyo Sarin attack: Aum Shinrikyo cult leaders executed|BBC
Japanese cult leader Shoko Asahara executed for Tokyo sarin attack|CNN
上記の2つの記事では触れられていませんが、アムネスティインターナショナルの記事では、今回死刑が執行された死刑囚の中には再審保留中だった者も含まれていた可能性があると書かれています。
Some of those hanged may have had requests for a retrial pending.
引用:Japan: Executions of seven Aum cult members fails to deliver justice | Amnesty International
「retrial pending」とは「再審保留」の意味で、再審請求「request for a retrial」(裁判所に裁判のやり直しを請求すること)を行った死刑囚が含まれていたという指摘です。
今回の死刑執行については、単純に考えて、7人を同時に死刑執行しなくてはならない理由がよく分からないというのが、私の印象でした。まして、その中に本来死刑にならなくてもすんだはずの人間が含まれていたら…?
日本人はこの問題についてもっと議論してもいい
外国人にとっては、日本に死刑制度があるということを意外に感じる人が多い、といいました。私も、最初に死刑制度の存廃について考えさせられたのは、英語講師に「死刑制度についてどう思う?」と質問されたからです。
私たちは、死刑という懲罰を当たり前のように思っているところがありますので、それに関してストレートに質問されると戸惑ってしまうものです。
しかし、死刑制度について賛成であっても反対であっても、自分の意見をはっきりと表現することが大切だと思います。
日本人はこういった問題についての議論を避ける傾向がありますが、外国人は単に興味を持って質問する人がほとんどです。ですので、「死刑についてどう思う?」と聞かれたら、堂々と自分の意見を主張しましょう。
そんな議論の先に、新しい思考やアイデアがあるかもしれません。