新型コロナウイルス関連の英語ニュースを見たり聞いたりしていると、必ずといっていいほど英語表現の一つが「Social Distance」です。日本語メディアでも「ソーシャルディスタンス」とカタカタ語として紹介しているところもあり、このまま定着しそうな予感もします。
似たような表現に「Physical Distance」という言葉もあって、メディアと場合によっては、こちらで表現されることもあります。
今回は、新型コロナウイルス関連用語として使用される「Social Distance」の意味、「Physical Distance」との違いについて紹介します。
Social Distanceの意味
Social Distanceは、日本語に訳すなら「社会的距離」「物理的距離」という意味になるでしょう。「物理的距離」という意味では、「Physical Distance」の方が直訳的になります。
Socialとは「社会的な」という意味があります。「社会的距離」というと、なんとなく知人や周りの人と距離を置くこと、のような印象があるかもしれません。でも、今回の新型コロナウイルス関連用語として使用されるSocial Distanceはそういう意味ではありません。
(ソーシャルディスタンスは病気の感染拡大を避けるための方法の一つである)
新型コロナウイルス関連の英語ニュースでよく見かける「Social Distance」は、感染予防の一環として採用されている方法のことで、飛沫感染を避けるために人との間に物理的距離を置くことなどを指しています。
(ソーシャルディスタンスは故意に他人との間の物理的距離を広くすることである)
(ソーシャルディスタンスは重要である、なぜなら感染者が咳をして飛沫を空気中に振りまくことで感染が広がるためだから)
社会学用語でも「Social Distance」という言葉はあって、こちらの方は特定の属性に当たる人々を排除することを意味し、ここで取り上げる「Social Distance」とは異なるものです。
Social Distanceの具体的距離は?
ウイルス感染を防ぐために、他人との間に物理的距離を置きましょうという意味で使われる「Social Distance」ですが、具体的にどのくらいの距離を置くべきなのかは国や主張する人々によって微妙に異なります。
(新型コロナウイルス感染のリスクを小さくするため、少なくとも6フィート他人から遠ざかってください)
(最低腕2本分、約2メートルの距離を他人からとること、できるだけたくさんの距離が望ましい)
英語圏でよく見かけるのは「2 metres(2メートル)」や「six feet(6フィート)」です。どちらもだいたい同じくらいの距離です。政府やメディアは、できるだけ人々にわかりやすい表記をしようとしているので、その集団によって表記方法が変わってくるのでしょう。
Social DistanceとPhysical Distanceの違い
名詞で使われると「Social Distance(社会的距離)」ですが、動詞的に「ソーシャルディスタンスをとること」つまり「距離をあけること」を意味する場合には「Social Distancing」といいます。
新型コロナウイルスが話題になり始めたころは、もっぱらSocial Distance、Social Distancingといういい方がされていました。そののちときどき出てくるようになったのが、Physical Distance、およびPhysical Distancingです。
どちらの言葉を使うかは、メディアなどによって異なっていますが、たとえばカナダ政府のウェブサイトでは、すでにPhysical Distancingが主流となっていました。
どうしてSocialがPhysicalになったのか。
それは、Socialという言葉に「社会的な」という意味があるためです。Social Distanceというと社会的関係において距離を置く、というふうにも捉えることができるのですね。人間関係そのものを断ち切ってしまうような感じがあります。
でも、実際にはそういうことを推奨しているわけではありません。あくまでも感染予防対策として、物理的に人と距離を開けましょうということなので、Social Distanceに代わって使用されるようになったのがPhysical Distanceなのです。
そのジレンマから、「social and physical distancing」という表現をする人もいます。
Social Distancingが示す具体的な行為とは
そうはいっても、Physical Distance(物理的距離)だと、「他人との間に数メートルの距離を開ける」という狭義の意味としてとらえがちです。Social Distanceのアイデアそのものは、単に物理的距離を置くだけでなく、たとえば以下のような行為もSocial Distancingのうちに含まれるのです。
- avoid crowded places and gatherings(人込みや集会を避ける)
- greet with a wave instead of a handshake, a kiss or a hug(キスやハグ、握手の代わりに手を振ってあいさつする)
- stay at home as much as possible(できるだけ家に留まる)
- grocery shop only once per week(食料品の買い物は週に一回とする)
- avoid non-essential use of public transport(不必要に公共交通機関を使わない)
- take public transportation during off-peak hours when necessary(必要な場合はピーク時を避けて公共交通機関を利用する)
- cancel or postpone conferences and large meetings(会議や大きな集まりをキャンセル、あるいは延期する)
- conduct virtual meetings(バーチャルミーティングを行う)
- use technology to keep in touch with friends and family(友人や家族との連絡はテクノロジーを使って行う=ネット上で行う)
- use food delivery services or online shopping(食料品の配達を含めオンラインショッピングを利用する)
- exercise at home or outside(自宅あるいは戸外でエクササイズを行う)
- work from home instead of at the office(オフィスではなく自宅から仕事をする)
このように、単純に「2メートルの距離をあける」という行為だけでなく、その他の社会的な行動も「Social Distancing/Physical Distancing」に含まれるんですね。
Social Distanceが保てない場合は
北米では、感染蔓延のピークは過ぎたのではないかという話題が盛り上がりつつあります。感染対策としての規制が緩くなれば、人々は外出する機会も増えてくるでしょう。そうなると、第二次ピークがやってくるのではないかという話もあります。
英語メディアではすでにSocial Distanceが保てない場合の対策として、マスクやそれに準じる物の着用を義務化しようという動きが報道されています。
(ソーシャルディスタンスが保てない場合には、マスクを着用するべきである)
このSocial Distancingという感染予防方法は、2022年まで続けなくてはいけないのではないかという専門家の指摘もあります。今年になって急にトレンドの言葉となった「Social Distancing」、しばらくの間付き合うことになりそうですね。