日本を含むアジア人の「マスク好き」は英語圏ではこれまでも話題になることがありました。しかし、今回の新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、アジア人の「マスク好き」をからかっていられない状況になりつつあります。
先日より、北米でも条件によってマスクの着用が義務化されるという報道が相次いでいます。
英語でもマスクは「Mask」ですが、日本語の日常会話でよく話題になる「マスク」と完全に同義ではありません。
英語の「Mask」と日本語の「マスク」はどう違うのか。こちらでの英語ニュースから例文を抜粋しながら説明します。
英語のMaskは日本語の「マスク」より広義
英語でもマスクは「mask」という単語があり、発音もほぼほぼ「マスク」です。
ただし、日本語では「マスク」というと花粉症の季節に多くの人が身につけるあのマスクをイメージしますが、英語のmaskはもっと意味が広いです。
英語で単に「mask」というと、医療用マスクはもちろん、仮面舞踏会の仮面や、ガスマスクなども含まれます。すべての種類のマスクが含まれるので、日常会話として突然「mask」が出てくると、「?」となってしまう英語ネイティブもいるでしょう。
日本語の「マスク」に相当する英語表現
そんな広い意味でつかわれる英語のmaskですが、日本語で一般的にいうところの「マスク」を指して言うには次のような言い方をするのが通常です。
- a face mask
- a surgical mask
どちらも、日本人的感覚でいう「マスク」を意味しています。
「surgical」とは、「外科用の」という意味で、「a surgical mask」は、医師や看護婦がよくつけているタイプのマスクを指します。不織布を使用した、使い捨て(
disposable)の医療用マスクのことです。
厳密には「N95マスク」と呼ぶようで、英語サイトでは特にそのタイプのマスクを指してそういう表現をしているメディアもあります。
(N95のようなマスクは、医療スタッフを守るためにデザインされたものだ)
日本では、花粉症やインフルエンザなどの感染症予防用として市販もされていると説明がありましたので、日本の方がいう「マスク」に間違いないでしょう。
「医療マスク」「外科用マスク」というと、なんとなく大げさに聞こえる感じがしますが、「仮面」や「ガスマスク」と区別して言うには、そういういい方になってしまうのでしょう。
新型コロナウイルスの影響でMaskが身近な英単語に
日本では、花粉症や風邪予防、その他の理由でマスクを着けることはわりと一般的ですよね。しかし、これまで欧米ではマスクをつけることはあまり一般的ではなく、新型コロナウイルスが広まり始めた段階でもマスクをつける人は少数派でした。
WHOでも、マスクを着けることが感染予防にはつながりにくいとまで発表していたのです。医療の現場でマスクが足りなくなることを危惧しての発表でもありましたが。
(専門家はかつて、マスク着用は必ずしも感染対策に当たらないとして、症状がない者はマスクを購入すべきではないと発言していた)
このように、最近では、明らかに医療用マスクの話をしているときはそのまま「mask(s)」と表現するシーンも増えてきています。これは、人々の日常会話でも同じです。
実際に報道されている「マスク」に関する英語表現
特に北米での新型コロナウイルス大流行が始まってから、アメリカやカナダではマスクの着用が推奨されるようになり、「mask(s)」という単語もかなり身近なものに変化してきているようです。
(CDCは、公共の場でのマスク着用を推奨している)
CDCは正式名称「The US Centers for Disease Control and Prevention(アメリカ疾病予防管理センター)」で、アメリカの感染対策機関です。日本語のニュースなどでもそのまま「CDC」と呼ばれたりすることがあるので、そのまま覚えておけばよいでしょう。
医療現場でのマスク不足が深刻化している中、メディアの報道でも「surgical mask(s)」といった医療に関連したニュアンスの持つ言い回しが避けられてきているように感じます。
(アメリカにおける新型コロナウイルスの蔓延に伴って、CDCは現在、他人への感染を防ぐため、公共の場では顔を覆うものを着用することを推奨している)
現実に、北米でもマスクの入手は困難なんですよね。だから、マスク着用を薦められても、なかなかマスクが買えないわけです。また、医療スタッフへのマスクを優先する意味もあるのでしょう。「mask」という単語を避けて、以下のような表現が代替されているのを見かけます。
- face coverings(顔を覆うもの)
- homemade face coverings(手作りの顔を覆うもの)
- non-medical face masks(非医療用マスク)←特にカナダ
さっきは「surgical masks」といっていたのに、今度は「non-medical face masks」といわなくちゃいけないの?と、英語学習者としては混乱してしまいそうですよね。
マスク=a surgical maskとして使用しない方がいい場合も
確かに、日本人やアジア人がよく身につけているマスクは「a surgical mask」として分類されますが、現在の状況下にあっては、あまりこの表現が好ましく聞こえない場合もありそうです。
たとえば「マスク=a surgical mask」という解釈で次のように言うとどんなふうに聞こえるでしょうか。
I am wearing a surgical mask every day to protect myself from the virus.
(ウイルスから身を守るため、毎日マスクを身につけています)
文法的にはまったく間違っていません。
でも、こういうフレーズを連発していると、「医療スタッフでマスクが不足している現状を顧みない」あんまり知的でない人、みたいな印象を与えてしまうかもしれませんね。
もちろん、自身が医療スタッフである場合には問題ありませんが。
私のおすすめとしては、たとえ医療用のマスクを使っているとしても、英語表現としては「a face mask」を使うほうがへんな誤解を与えにくいのではないかと思います。
「マスク着用義務化」に関する英語表現
これは、先日カナダにおいて、飛行機で旅をする乗客にマスク着用が義務化されるという報道で使われた表現です。
(カナダ政府は、現在すべての飛行機移動する旅行者について非医療用マスクあるいは顔を覆い隠すものの着用を要求する見通しだ)
(月曜日以降、すべての飛行機乗客は非医療用マスクの着用が必須となる)
この「non-medical masks」という表現は、今のところカナダで主に使われている言い方のようです。
一方で、マスク着用が義務化されているのはカナダに限ったことではありません。アメリカの自治体でも場所と状況によってはマスク着用を義務化しようという動きが出ています。
(金曜日以降、ニューヨークでは社会的/物理的距離が保てない状況にあっては、マスクの着用が必須となる)
(ロスアンゼルス政府は、生活必需品購買における買い物客および販売スタッフのマスク着用を義務化した)
マスクに関する英語表現まとめ
今まであまり英語圏で話題にならなかった「マスク」ですが、ここにきて、新型コロナウイルスの影響でMaskの定義も変化するかもしれないですね。
日本人がいうところの「マスク」を意味する英語表現は、基本は次の二つです。
- a face mask
- a surgical mask
しかし、今の段階でsurgical masksは医療スタッフに優先したいという思惑から、surgical masksという表現は控えられるのではないかと予想されます。それに代わって、一般化しつつある英語表現がコチラ。
- face coverings(顔を覆うもの)
- homemade face coverings(手作りの顔を覆うもの)
- non-medical face masks(非医療用マスク)←特にカナダ
一部、少々紛らわしい言い方もありますが、言葉は時代の流れによって変化するもの。今後英語圏における「mask」の定義がどのように変わるのかを観察するのも興味深いかもしれませんね。